俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
私はとっさに自分の身体の後ろに手紙を隠した。
でも大志くんはその不自然な動きを見逃してくれなかったらしい。
「なに隠したの?」
「べ、べつに……なにも?」
結衣羽がいる手前か、笑顔で物腰の柔らかい大志くん。だけどすっとぼけた私に対してその顔が一変した。
短く「チッ」と舌打ちをして私に向かって手を差し出したのだ。それを見たとなりでは結衣羽が目を見開いているのが視界の端で確認できた。
「嘘つけ。いいから見せろ」
「な、なにを……」
往生際の悪い私にイラついたのか、手紙を持つ私の右の腕を掴んで無理くり前に出させた大志くん。
現れた手紙を奪って読んだ。バツが悪くて、私は顔をうつむけた。
内容が内容だし。しかも大志くんに向けられた勘違いもいいところの嫉妬が表れている。
とても、気まずい。なんと、言われるか……。
「おい、大丈夫か……?」
「へ?」
まさかだった。まさか第一声が心配する言葉だとは思わなかった。
予想外すぎて、リアクションが取れず、きょとんとしてしまう。
「こんなの、普通に怖いだろ……」
「うん……いやでも、ただのイタズラかもしれないし」
「それでもこれはヤベェだろ……」
真剣な表情と、真剣な声。
もちろん私だっていきなりこんな手紙を貰って、気持ちが悪かったことに違いはない。
だけど当事者でもない大志くんがそこまで私の立場になって考えてくれていることが、シンプルにうれしいのだ。
「ありがとう、心配してくれて」
「なにかあったら言えよ。この手紙どうする?」
「一応待っとくよ」
「そうか」