俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
「でもあのクラスの爽やか王子がももかにだけあんな態度を見せるなんて」
結衣羽が私の席に近づいてきて、空いていたとなりの席に腰かけた。
「ある意味特別かもよ」
「そんな特別、求めてないんですけど」
「いいじゃん、いいじゃん。裏の顔をイケメンが特別に見せてくれるって、なかなかいいシチュエーションじゃん」
そう……かな。
私も、他人事だったらそう思うのかな?
でも、ちがうんだよね。
どっちかというと、私にはいまクラスメイトに見せている姿が裏のような気がするの。
本当の佐野大志は、短気で怒りっぽくて、口が悪くて、あんまり笑わない人なんだと思う。
優しくないわけじゃない。
昨日だって何も言わずに課題に付き合ってくれたし、駅まで送ってくれた。
「恋、はじまるといいね」
「大志くんは、無理だよ」
恋はしたい。けど、大志くんは無理だ。恋を信用してない彼と、恋はできない。
「恋に無理もくそもないんだよ。気づいたら好きになってるから」
「前にも言ってたね、それ」
「うん。いまの彼氏を嫌いになれって言われたら、絶対ムリだもん」
結衣さんがにこっと笑う。私もつられるよう笑った。
ふと視線を外して、大志くんに目を向けたその奥、廊下にいる佐藤くんが私たちの教室を覗き込む姿が目についた。
中を見渡していた彼と目があって微笑まれる。