俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
「ほら、行ってきなって」
「しつこいってば。もう帰ろうよ」
「ももか、恋したいって言うわりに臆病よね」
「うるさいから」
「あ、ちなみに今日私、彼氏とデートだから一緒に帰れないよ」
「えっ、聞いてない‼︎」
「今言ったもん」
白い歯を見せて笑う親友に、唖然とする。
くぅ、こういうとき、親友と彼氏とじゃやっぱり彼氏優先になるの、ほんとよくない風潮だ。
恋に悩む親友を置いて行くだなんて。
「悲しそうな目で見ないで。もう行くから」
「……また明日ね」
「すねないの。あんたもステキな彼氏見つけな」
手をひらひらさせて教室を出て行った親友。
私も教室を出ようとかばんを持ったとき、ふと自分が今日日直だったことを思い出した。
日誌を書いていなかったことも同時に思い出したのだけれど、どうせなら帰ってから気づきたかった。
居残り決定だ。もう、やってらんない。
しかも、もうひとりの日直は今日、体調不良でお休みしていて、日直は実質私ひとりなのだ。
親友に置いて行かれ、居残りが決定して……ああ、もう、ほんとついてない。
クラスメイトがうるさい。なんの話題で盛り上がっているかは知らないけど、側(はた)から見ていたらげんなりする。
日誌を取り出した。ページを開く。音楽でも聴きながらしようかな。
かばんからイヤホンを取り出して、ウォークマンに繋いだ。大好きなバンドの音楽が流れ出して、周りの音を遮断する。
自分の世界に入り込むのは、好きだ。
こうして音楽を聴きながら、いろんなことを想像するのが好きだった。
中学の頃はラブソングを聴きながら"高校生になったら……"と、たくさんの憧れについて妄想した。
先輩に恋した場合とか、同級生とカップルになったらとか、二年生になって、イケメンな後輩に恋しちゃったら……とか。