俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
今日会ったとき、すこしでも可愛いって思ってもらいたくて、普段よりも丁寧にメイクをしたし、癖っ毛の髪の毛のセットも、頑張った。
制服を着るときも、スカートの長さだったり、シャツのシワだったりを念入りに確認した。
テレビのニュースでは梅雨が開けたと報道されていた。
「行って来ます!」
いつもと同じ時間に起きたのに、準備に手間暇かけたからか、家を出るのが遅くなった。家を出てから駅までの道を走って向かった。
眩しい太陽の日差しは日をおうごとに、容赦がなくなってきている。夏に移り変ろうとしているのかもしれない。
けれど駆け抜けるスピードも、肺に入ってくる朝の空気も、なんだか最高に気持ちがいい。
……あれ?私、いま、もしかして青春している?
駅に到着して、ホームまでノンストップで走り、そのまま閉まりそうなドアをすり抜けて車両に飛び乗った。
走った勢いで乱れた前髪を手ぐしで整えて、つり革に掴まって、流れる景色に視線を投じた。汗がじんわりとにじむ。
学校の最寄り駅に着いて、下車。ちらほら同じ制服を着た人たちを横目に改札を抜けた。
空の色を確認。大志くんが上を見ていることが多いことは、もう知っている。
他にはなにが好きなんだろう?
カフェで頼んだコーヒーは砂糖やミルクなどは混ぜずにブラックで飲んでいた。
教室にいるときは、穏やかに目を細めて笑うけど、本当に可笑しそうに笑うときは顔の中心にぐっとチカラが入ったように笑うよね。
それを手で隠すけど、隠しきれていないところ、地味に好き。
ああ、もう、ダメだ。認めた"好き"の気持ちは、こんなにも溢れて止まらない。
出会えた初めての恋に、幸せを感じる。