俺がこんなに好きなのは、お前だけ。
中学校は小学校からの持ち上がりメンバーがほとんどだったし、好きになれる人がいなくて、恋なんてできなかった。
だからこそ、ずっと高校生に強い憧れをもっていた。
高校生になれば、新しい出会いがある。
もしかしたら、素敵な人に出会って素敵な恋ができるかもしれない。ううん、素敵な恋が、したい。私を待っているって、
そう思って入学したはずなのになあ。現実は厳しすぎはしませんか?
「…………」
日誌とにらめっこしながら文字を書き連ねる。今日の時間割りと内容とそれから出来事。
今日ってなにがあったかな。あんまり思い出せない。あ、体育でクラスマッチに向けて練習したな。それを書こうかな。まあ誰も真剣に読まないし、適当に書いておけばいいか。あ、曲が変わった。新しい曲だ。
この歌好きなんだよね。歌詞とメロディー。どっちも好みすぎる。
まだ覚えてないけど、今度結衣羽とカラオケ行くときに歌いたいなあ。
ふと顔をあげて、曲の雰囲気に身を任せようとしたときだった。完全に気を抜いていた。
「……⁉︎」
目の前の席をひとつ飛ばした前の席に大志くんが椅子を跨って座っていた。目があって、ドキッと驚きから心臓が跳ね上がる。
いつの間にか教室には私たちふたりとなっていた。
「た、大志くん……っ、なんで……っ?」
慌ててイヤホンを取った。
大音量で聴いていた音楽が、ジャカジャカと漏れている。
「んー、声かけても夢中で日誌書いてたから観察してた」
「えっ」
「眉間にしわ寄せたり、ため息吐いたり、かと思ったらニヤケそうになってたり、色々面白かったよ」
「……っ……」
にこにこと、いつも通りに笑う大志くん。
思考がすべて顔に出ていたということだろうか?
穴があったら今すぐここから逃げたい気持ちでいっぱいになる。