ヤルことからはじめよう
ラブストーリーは突然に!?
 さかのぼる事10年前、半年前から気になる男子が目の前のバス停にいた。

 私の通っている女子校の少し離れたトコにある、工業高校の男子。いつも楽しそうに、4・5人の友達に囲まれてしゃべっている。

 笑うとクシャクシャになるその笑顔が何とも言えなくて最初は、心が和んでいただけだったのに気がついたら、いつの間にか彼を見かけるだけでドキドキして恋をしてしまった。

 バスを待つ間、本を片手に向かい側にいる彼をチラ見する。

 それが私の楽しみでもあり、自由を感じる事が出来る時間だった。

 家の事情で大学を卒業したら見合いをしろと父に言われて、反発真っただ中だった高校時代。自分の恋愛すら自由に出来ないであろう未来に、ほとほと嫌気がさしていた。

 想いがつのる半面、実らない恋だと考え切なくてどうしようもなくなり、ある日思い切って、彼のもとへ駆け出していた。

「あのっ、ちょっとお話したい事があるんですけど……」

「ヒュー安達っち、相変わらずモテるねぇ」

「うるさいてめぇら! あっち行けよ」

 友人数人を右手でシッシとあしらうと、私の腕を掴んで強引に歩き出す。

「今日バイト休みますって、店長に言っておくからな。頑張れよぅ」

 後方から応援する声を聞きながら、友人にピースする。

「ごめんね、俺のダチうるさくって。それよか話って何?」

 歩きながら覗きこむように、私の顔を見る。思わず、うつむいてしまった。

「あのですね、半年前から安達さんの事が気になってました……」

 耳まで赤面しているであろう私の顔を、そんなにジッと見ないでほしい。

「俺の事、見てたの知ってたよ。よく目が合ってたからさ」

「へっ?」

「お前、これから暇? 良かったらこの先曲がると俺ん家なんだけど、来ない?」

 びっくりして思わず顔を上げると、そこには誘うような眼差しの安達さんがニコニコしてて――迷う事なく、二つ返事でOKしてしまった。
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