恋ってやつを教えてやるよ。

そこには、短パンに薄手の長袖Tシャツを着た、完全部屋着姿の美恋が立っていて、遠慮する様子もなく俺の部屋に入ってこようとしているところだった。



「返事する前に開けたら、ノックの意味ねぇだろうが」


「あのさー、ジロ、ゆう兄の漫画持っていってない?読みたいから返してもらってこいって言われたんだけど」


「人の話聞けよ……。てか、祐希くんに借りた漫画ならそこ」



寝転がったまま、ベッド脇の机の上を指さすと。



「あー!そうそう!これこれ!」



と美恋が俺の側まで近づいてくる。


俺がいるベッドサイドを横切る美恋から、ふわり石鹸みたいな香りが漂ってきて、風呂に入ったばかりなのがわかった。


よく見れば、髪は濡れたまま。


湿った髪の毛が頬に張り付いてる。



露出度の多い部屋着、濡れた髪。


いくらなんでも、無防備すぎだろ。



美恋が微塵も俺のことを男として見てないことがよくわかって、なんでか分からないけどイラッとした。



「美恋」


「んー?」


なぜか俺の机の椅子に座って、返してもらいにきたはずの漫画を読み始めた美恋に俺は声をかける。
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