恋ってやつを教えてやるよ。
それでいいはずだろ?
元はと言えば、俺が美恋に恋活をさせたんだから。
だけど……。
そうか。
今の美恋の頭の中は、裕也ばっかりなんだ。
俺がこんなそばにいるのに。
こんなふうに触れてんのに。
お前の頭ん中は、俺じゃなくて裕也かよ。
なんかそれ……
すげームカつく。
「ジロ?」
考えるなら俺のことを考えろ。
他のヤツが入り込む隙がないくらい、俺のことで頭ん中いっぱいになればいい。
「……お前は、俺のなんだよ」
気づけば俺は、美恋の長い後ろ髪をサイドへと流し、露わになったそのうなじに、
唇をあてていた。
「ひゃ!」という声と小さく跳ねる美恋の体が、余計に俺の中に眠る何かを煽ってくる。
まるで俺じゃないもう一人の何かが、俺の体を乗っ取ってるみたいだ。
その間、浮かんできたのは。
────『うかうかしてる間に、他のヤツにでも取られたらどうすんだよ!嫌だろ普通に!そうなる前に、自分のもんにしたいって思うのが男ってもんだろ!?』
そう言ってた、本田の言葉。
美恋と裕也が上手くいけば、美恋の笑った顔も、怒った顔も、たまに見せる不細工な泣き顔も、裕也に見せる方が断然多くなるんだろ?