恋ってやつを教えてやるよ。

あーあ。


現役バスケ部の子達、青ざめちゃってるじゃない。





キラキラ光る汗を拭いながら、いつになく真剣な様子のジロに気づけば目が奪われていた。


華麗なドリブル、高いジャンプ。


帰宅部っていうのが嘘みたいな軽い身のこなし。



子供みたいに楽しそうな顔しちゃってさ。


思わず笑みが零れる。



ジロは昔から、何をやらせても人並み以上に出来るヤツだった。


運動はもちろん。何だかんだで勉強も出来る。


そんでもって顔までいいもんだから、よくジロのことを知らない人は、どこぞの小説や漫画に出てくるハイスペックヒーローみたいだって言う。


私はそれを聞くとつい笑っちゃうけど、多分、ここで声援を送ってる女子達の目にも、ジロはそんなふうに映ってるんだろうな。


恐らく、茅野さんの目にも……。




「元木くん……カッコイイ……!」



茅野さんが思わず漏らした声が聞こえてきて、はっと彼女へと視線を戻した。


視界に映る茅野さんは、頬をピンク色に染め、潤んだ瞳でジロを見つめている。


その瞳は、どこか熱を帯びていて……。



“もしかして”



そう思った。



もしかして……茅野さんはジロのことを……?


いやいや。そんなまさか。


だけど、その瞳は明らかに、“恋する女の子”の瞳。
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