恋ってやつを教えてやるよ。

ドクン、と心臓が不穏な音を立てた。


何で今まで気づかなかったんだろう?


いつから茅野さんは、ジロをこんな目で見てたんだろう?



────二人は、両想いなんだ。



「美恋?どした?」



俯く私の顔を、幸が心配そうに覗き込んでくる。



「……モヤモヤして、気持ち悪い」


「え!?大丈夫!?保健室行く!?」



違う。


そうじゃない。


そうじゃないけど、何が違うのかもよくわからない。



かっこいいジロも、かっこいいジロにときめいてる茅野さんも、とにかく視界に入れたくなかった。


二人を見ると、胸が……苦しい。



「美恋?気持ち悪いなら先生呼ぼうか?」



……ジロは、かっこよくなんかないのに。


好き嫌いは多いし、寝てる時の顔はまぬけだし、実はちょっぴり音痴だし。


茅野さんは、そんなジロを知らないじゃない。


私は、知ってる。


そんなジロを知ってる。


私の方が、ずっとずっとジロのことを知ってるのに、何でこんなに不安にならなきゃならないんだろう?



「元木くん!頑張れー!!」



茅野さんがそう叫ぶと同時に、ジロが放ったシュートがゴールに吸い込まれていく。
< 115 / 152 >

この作品をシェア

pagetop