恋ってやつを教えてやるよ。
ドクン、と心臓が不穏な音を立てた。
何で今まで気づかなかったんだろう?
いつから茅野さんは、ジロをこんな目で見てたんだろう?
────二人は、両想いなんだ。
「美恋?どした?」
俯く私の顔を、幸が心配そうに覗き込んでくる。
「……モヤモヤして、気持ち悪い」
「え!?大丈夫!?保健室行く!?」
違う。
そうじゃない。
そうじゃないけど、何が違うのかもよくわからない。
かっこいいジロも、かっこいいジロにときめいてる茅野さんも、とにかく視界に入れたくなかった。
二人を見ると、胸が……苦しい。
「美恋?気持ち悪いなら先生呼ぼうか?」
……ジロは、かっこよくなんかないのに。
好き嫌いは多いし、寝てる時の顔はまぬけだし、実はちょっぴり音痴だし。
茅野さんは、そんなジロを知らないじゃない。
私は、知ってる。
そんなジロを知ってる。
私の方が、ずっとずっとジロのことを知ってるのに、何でこんなに不安にならなきゃならないんだろう?
「元木くん!頑張れー!!」
茅野さんがそう叫ぶと同時に、ジロが放ったシュートがゴールに吸い込まれていく。