恋ってやつを教えてやるよ。
『別に、連れ戻すつもりなんかねーし』
『じゃあ、何でついてくるの!?』
幼い私は足を止め、泣き腫らした目でジロを睨みつける。
そんな私に、ジロはふてくされた顔をして首の後ろに手を当てる。
『美恋が家出するなら、俺も一緒にする』
『はぁ〜?ジロはおばさんと喧嘩なんかしてないじゃない』
『してない。だけど、美恋が笑ったり泣いたりしてる時、そばにいれないのはヤダ』
『……え?』
『俺はどんな時も、ずっと美恋のそばにいるって決めてんだよ!!』
真っ直ぐな瞳に、真っ直ぐな言葉。
すごくすごく嬉しかったのを覚えてる。
もしかしたら私は、ジロのあの言葉があったから、ずっとずっとジロといられるものだと信じて疑わなかったのかもしれない。
あの言葉は、きっと一生忘れられない私の宝物。
ねぇ、ジロ。
私達はもう、あの頃みたいにはいられないのかな?
───
────
「ジロ……」
……あれ?
おかしいな。
ついさっきまで、幼いジロと話してた幼い私の声じゃない。
しかも、このニオイ何?
薬みたいな……。
ゆっくりと重たいまぶたを持ち上げていく。
ボヤける視界。それが、次第にクリアになっていき、目の前の光景が浮かび上がってくる。