恋ってやつを教えてやるよ。

「なぁ美恋。頼むからこっち向いて?お前、朝からずっとそんなんだけど、正直お前にそういう態度とられんの……しんどい」



ギッとベッドが軋んで、私の上に影がかかる。


私に覆い被さるように手をついて、頭まで被った私の毛布を優しく剥がしたジロの顔は、怒られた後の子犬みたい。



……ずるい。


そんな顔されたら、許すしか無くなっちゃうじゃない。



「……もういい。てか、私もごめん。グーパンチして」


「あー、あれはかなりきいたな」


「も、元はと言えばジロがいけないんでしょ!?」


「それにしたって、ヘビーなパンチだったけどな」


「もう一発お見舞いしようか?」



あっさりいつもの調子に戻ったのがおかしくて、顔を見合わせ、同時にぷっ!と吹き出してしまう私達。



こうしてジロと二人きりで過ごす時間は、モヤモヤしていた自分が嘘のように心が穏やか。


このまま、二人だけの世界になっちゃえば、恋がどうとか、両想いがなんだとか、ごちゃごちゃと考えなくて良いのにな……。


さっき体育館で見た、ジロを見る茅野さんの瞳を思い出して、また胸がギュッと苦しくなった。
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