恋ってやつを教えてやるよ。
「ジロ……。あんたってやつは、もうすぐ夕方だってのにまだ寝ぼけてるの?私、ちょっと本気であんたが心配になってきたよ」
「ちっげーよ!!バッチリ4時間目辺りで目ぇ覚めてるわ!!」
「おっそ……。じゃあ何?何か変な物でも食べた?」
そうでもなきゃ、ジロが自分から恋の話をふってくるはずがない。
恋の話なんかするくらいなら、野球選手の誰の調子がどうだとか、少年漫画の新刊の内容がどうだとか、そんな話を延々と喋ってる。コイツはそんなヤツだ。
「……ふ。まぁ、予想してた通りの反応だけどな」
「は?何それ。なんかムカつくんだけど」
ヤレヤレと欧米人のような仕草をするジロ。
何かコイツ浮かれてる……?
本当にどうしちゃったんだ。
そんな様子のジロを怪訝な顔で見ていたら、それに気付いたジロが「エホンッ」とわざとらしい咳払いをした。
「美恋ってさ……。茅野(かやの)と、話したことあるか?」
グーした手を口元に当てて頬を染めながら、照れくさそうにジロがそう聞いてくる。
「茅野さん……?って同じクラスの?」
「あー……うん。そうだ……うん」
「そりゃクラス一緒だしあるけど。それが?」