恋ってやつを教えてやるよ。
途中もの凄い人混みの中、ジロが迷子になっちゃって……。いや、ジロは、私が迷子になったって言い張るんだけど。
ジロが家にスマホを忘れたせいで連絡も繋がらないし、もうこれは一人で家に帰るしかないかなってとぼとぼ歩いてたら。
『ねぇねぇ、君可愛いーね!俺らとどっか遊びに行こうよ!』
ガラの悪いお兄さん達に囲まれちゃって。
断っても断っても諦めてくれない彼らにもうどうしようってべソかいてたら。
『おい!!そこのおっさん達!!美恋に触んじゃねぇっ!!!』
必死に私を探してたのか、汗だくのジロが血相を変えて現れたんだ。
『んだ!?この生意気なガキ!!』
頭に血が上ったお兄さん達にジロが掴みかかられそうになって。
だけどジロは。
「うるせぇっ!ナンパは鏡見てからやれよ!!」
ぴゅーって。
さっき屋台で当てた水鉄砲で応戦。
顔に水を受けたお兄さんが一瞬怯んだ隙に、ジロは私の手を掴んで。
「美恋!!逃げるぞ!!」
って一目散に走って逃げた。
武器は水鉄砲だし、結局逃げるが勝ちだし。
全然かっこよくなんかなかったけど。
あの時のジロは、ちょっとだけヒーローみたいに見えたんだ。