恋ってやつを教えてやるよ。
1*恋ってやつを教えてやるよ。
「はよーっす!裕也(ゆうや)!なーなー昨日のアレ見た!?」
「おはよジロ。アレってなに?」
「ほらアレだよアレ!あの面白いテレビ!」
「だから、アレじゃわかんないっての」
登校してきて早々、男子二人のそんなやり取りが目の前で繰り広げられていた。
私は呆れたように溜息を一つ吐く。
……まったくもう。本当にコイツは。
“アレ”で人にものが伝わると思ったら大間違いなんだぞ。
ほら。高峰(たかみね)くんもすっかり困り顔じゃんか。
「おはよ」
「おは……ってうおっ!美恋(みこ)!お前、後ろにいたのかよ!?」
「駅からずっと後ろにいたわ」
「おいおいストーカーかよ!声かけろよな!」
誰がストーカーだ。誰が。
「なぁ、美恋は昨日のアレ見ただろ?ほら!あのテレビ……あーくそ!タイトルが思い出せねぇっ!」
だから、そんなの分かるのは────
「“世界の端々に行ってグー”でしょ。ジロ」
「そうそう!それだ!!さっすが美恋!!」
……私くらいだっての。
デカイ図体して小学生みたいに笑うこの男、ジロ───もとい、元木仁郎(もときじろう)は私、飯島美恋(いいじまみこ)の幼なじみであり親友。