恋ってやつを教えてやるよ。
2*恋の素晴らしさを知りましょう。
「さぁ、美恋ちゃん。恋のお勉強を始めようじゃないか」
……ち。現れたな裏切り者め。
玄関の扉を開けて早々、私は心底げんなりする。
そこには、キメ顔を作り、さらにナルシストっぽく前髪をかきあげるといった謎のキメポーズをしたジロが私を待っていたからだ。
あぁ。せっかくの清々しい秋の早朝が台無しだ。
もう一回言う。台無しだ。
「朝からうちの前でアホなことやるのやめてくれる?警察呼ぶよ?」
「警察といえど、恋して最強になった今の俺には適うまい」
「安心しろ。恋の“こ”の字を言う前に牢屋にぶち込まれるから」
通り道に立つジロを押し退け、家から最寄りの駅までの道を歩き出す。
いつもなら、ジロと並んで歩く道程を今日はジロをおいて早足で先を進んだ。
ほとぼりが冷めるまで、ジロとはしばらく関わらないでおこう、と昨日寝る前に決めたからだ。
うん。今は間違いなくそれがいい。
そうでもしなきゃ、コイツはまたろくなことを言い出しやしないんだから……。
「なぁ、美恋。昨日のことだけど」
「ひぇ!?」
い、いつの間に隣に!?
「何だよ?んな驚くか?」