恋ってやつを教えてやるよ。

だから、ジロが先を行ってしまうのはやっぱりちょっとだけ心細い。



───『どちらかが恋をしたら、きっと変わるだろうね』



───『その考え方も、二人の関係も』




前に幸に言われた言葉が頭をよぎる。



このバランスが崩れたら、私達はどうなってしまうんだろう?


幸の言う通り、何かが変わっていってしまうのだろうか?


何かって、何が?



もしかしたら私は、ただただ不安なだけなのかもしれない。


10年間変わらなかったこの関係が、今までの私達とは違う関係に変わってしまうのが……。



だけど、そんなこと考えたってもうどうにもならないんだよね。



だってジロはもう、恋をしちゃったんだから……。




「んー。それじゃあさ、とりあえずこんなのってどう?」



幸が何かひらめいたように人差し指を立てて乗り出してくる。



「まず、元木が美恋に自分の恋する姿を間近で見せて、美恋に“恋がしたいっ!”って思わせるの!」



幸のその言葉を聞いて、私とジロはキョトンとしたまま顔を見合わせる。



「そしたら恋する気持ちが多少理解できるようになるかもしれないし、楽しそうだなって思えば、美恋も恋したくなるかもじゃない?」
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