恋ってやつを教えてやるよ。
咄嗟に耳を押さえてジロから離れると、不敵な笑みを浮かべたジロが、片方の口角を上げて私を見下ろしてた。
何だか、嫌な予感しかしない……。
いや。
ものすごく嫌な予感がする。
この時の私は、
この先に予想以上にとんでもない日々が待ち受けていようだなんて、
知る由もなかったんだ────。
*
「知ってっか?恋愛すると、朝の目覚めが良いんだぜ?」
「……」
「あー、学校だりぃなー。サボってゲームしてーなー。今までの俺は毎日こうだったわけ」
「……」
「それがな?あー、学校だりぃなー。でも、学校行けば茅野と話せっかもしれねぇしなー。つか、茅野に会いたくね?ってなるわけよ」
「……」
「恋って、最高じゃね?」
「っだぁーーー!!やかましいっ!!」
食堂のテーブルをバンッ!と叩いて、隣の浮かれポンチを睨みつける。
周りにいた生徒達が、何だ何だとこっちを見てくるけど、そんなの知ったこっちゃない。
「さっきからぺちゃくちゃぺちゃくちゃ、惚気るのもいい加減にして!せっかくの牛丼がまずくなるでしょーが!」
「惚気じゃねぇ。俺は、お前に恋する素晴らしさを教てるだけだ」
「だっっから!それが惚気だっつってんの!!」