恋ってやつを教えてやるよ。
……てのもそうだけど、もっと最悪なのは私の顔がほんのり赤く染まっていること。
さっきのジロ……。
何だかジロじゃないみたいだった。
────“俺、好きな子できたから。他の子に興味ない”
なんか……男の顔してた。
10年間一緒にいたけど、今まで見たことないようなジロの顔。
あんなセリフだって、言うようなヤツじゃなかったのに。
「とれた?」
「あ、うん!とれた!」
それもこれも、ジロが恋をしたからなの……?
その後もジロの“恋って素晴らしいんだぜ”アピールは続いた。
そんなんで「本当だ!恋って素晴らしいね!」なんて、私が言うとでも思ってるのかアイツは。
グダグダと恋について語られたって、恋に興味をもつどころか、頭にすら入ってこない。
そんなのよりずっと────。
「……でさー、昨日のあの番組のさー」
「……」
「……ジロ?」
時折ジロが、話の途中でどこかに気が逸れることが多くなった。
その視線の先は、大概彼女───茅野さんだ。
前は、こんなことなかったのに。
私と話している時は、いつも私の目を見て、ジロのその瞳には私しか映っていなかった。