恋ってやつを教えてやるよ。
しまった、と思った時にはもう遅かった。
ジロは私の言葉にカチンときた顔をして、同時に顎に添えていた自身の手に力を込める。
「あのなぁ。いい加減にしねーと」
そして、私を強く引き寄せて。
「そのうるせー口ふさぐぞ!?」
そう怒鳴ったのだ。
その声はクラス中に響き渡り、みんながこちらを振り返る。
何人かの女子が「わぁ!」と言って口をおさえ、頬を染めているのが見えた。
ジロのヤツ……今、何言った?
「……ジロ。その言葉の意味わかってる?」
ジロの肩を掴み、高峰くんが恐る恐るそう聞くと。
「あ?意味も何もそのままだろ?」
「ふさぐって、何でふさぐつもり?」
「はぁぁ?何ってんなの、手しかないだろ!他何でふさぐんだよ?」
とぼけた顔のジロを見て、高峰くんは大きな溜息をつく。
「……ジロってさ……ほんっと……。いや、いいや。美恋ちゃん、ちょっと来てくれる?」
今回ばかりは高峰くんも本気で呆れているようで、無表情でジロから私を引き剥がし、手を取り廊下へと引っ張っていく。
そんなやり取りを幸は何だか楽しそうに見守っていた。