恋ってやつを教えてやるよ。
廊下に着くと、引っ張っていた手を離し、高峰くんはゆっくりと私を振り返った。
「いくらジロに他意はないとはいえ、びっくりしたよね?」
苦笑いでそう問いかけてくる高峰くんは、どうやら私の気持ちなんてお見通しのようだ。
バクバクとまだ心臓が鳴り止まない。
火照った熱も、一向に冷めてはくれない。
高峰くんの言葉の通り、すごくすごくビックリした。
だだ、口を塞ぐって……そう言われただけなのに、体が固まって動かなくなった。
キスされるかと思ってしまった……。
思わず頭を抱えその場に屈み込む。
私、どうかしてる!
ジロが私にそんなことするはずがないのに!
考えればわかることなのに!
この間からジロが変なせいで、きっと混乱してるんだ。
「高峰くん。ごめんね。廊下に引っ張って来てくれてありがとう。こんなの、ジロに気付かれたらバカにされるところだった……」
「いいよ。だけど、あんまり俺も油断してられないなって思ったかな」
「え?」
高嶺くんは曖昧に笑って見せる。
「……ううん。気にしないで。美恋ちゃんの熱が冷めるまで、そばにいるって言ったんだよ」