恋ってやつを教えてやるよ。
そんなホイップが、家中を走り回れるくらい元気になった頃には、ジロが隣にいることが当たり前になっていたんだ。
小学校からの帰り道、何となしに手を繋いで帰るくらい、性別なんて関係なく仲が良かったあの頃。
ジロとこうして手を繋がなくなったのは、いつからだろう?
今、こうしてジロに言われるまで、そんな頃があったことすら忘れてた……。
「お前が裕也を恋の相手にするって言った時、何かしっくりこなかった」
ジロは、繋がった私達の手に視線を落としながら、ポツリと話し出す。
「何かわかんねーけど、昔こうやってお前と手繋いでたのを思い出して、ちょっと……寂しくなった」
“しっくりこない”
“寂しい”
ジロの言うその気持ちなら、私にも身に覚えがある。
もしかしたらそれは、ジロが茅野さんを好きになったと聞かされた時、私が感じた気持ちと少しだけ似ているのかもしれない。
「……私も、ジロに茅野さんに恋したって聞かされた時、同じ気持ちだったよ」
「そっか……」
「うん……」
ジロの手から伝わってくるジロの体温は、昔も今も変わらない。