恋ってやつを教えてやるよ。
私より、ちょっとばかり高いジロの体温。
だけど、ジロの手は昔よりもずっと大きくなってた。
「いつまでも、子供の頃みたいにはいられねぇんだよな……」
「……そうだね」
そう返事をすると、私の手を握っていたジロの手の力が弱まった。
そして、ゆっくりとジロの体温が離れていく。
小さな頃の私は、いつかこうしてジロの手が離れていくなんて、思いもしなかった。
あの頃は、ジロと手を繋いでいればどこまでも行ける気がした。
ずっと手を繋いで、同じ歩幅で、ずっとずっとジロの隣にいられるんだと思ってた。
バカだよね。
そんなの無理に決まってるのに。
ジロも私も、いつまでも子供のままなんかじゃいられないのに。
ジロは何かふっきれたように「よし!」と気合を入れた。
「むしろ、裕也で良かったよな!あいつ頭良いし運動神経良いし、おまけに性格もめちゃくちゃ良いから、恋の相手として、俺も安心して太鼓判押せる」
「……うん」
「お前がちゃんと裕也に恋できるよう、俺がしっかりサポートしてやるからな」
ポンと私の頭に手を乗せて、身を屈め私の顔を覗き込んでくるジロ。
そんなジロは、いつになく優しい笑みを浮かべてた。