恋ってやつを教えてやるよ。
5*ジロの気持ち①
「ただいま」
玄関の扉を開けると、靴の整頓をしてる母ちゃんが顔を上げた。
「お帰りなさい。遅かったわね」
「んー。美恋達とマック寄ってた」
靴を脱ぎながらそう答えると、母ちゃんが「あら!」と嬉しそうに声のトーンを上げる。
「美恋ちゃんと相変わらず仲が良いのねぇ」
「……まぁ、普通」
「お姉ちゃんとゆうくんなんかまた喧嘩してるらしいわよ。まったく、いつになったらあの子達は落ち着くのかしら……」
頬に手を当て、溜息をつく母ちゃんを横目に、“アイツらはあれが通常運転なんだよ”と頭の中で呟く。
でも言わない。
言ったら言ったで、多分話が長くなるから。
「あ。そうだ。食べてきたなら今日は夕飯はいらないわよね?」
「いや、食うし」
「食うのかい」
「まったく、どんな胃袋してるのよ」そう悪態をつく母ちゃんの言葉は聞かぬふり。
しょうがねーだろ。育ち盛りなんだから……。
そそくさと玄関を上がり、自分の部屋がある2階へ向かおうと階段に足をかける。
「もうすぐご飯できるから、着替えたらすぐ下りてきなさいよ!」
「へーい」
緩い返事をしながら、俺は2階へと続く階段を上った。