恋ってやつを教えてやるよ。
それから俺と茅野は、他愛もない話しをしながら一緒に教室へと向かった。
教室の前の廊下に着くと、茅野が友達を見つけ「おはよう!」と言って立ち話を始めたので、俺は一人でクラスへと入っていく。
実に幸せなひと時だったぜ。
「ジロ、おはよ」
「おっす」
教室の中に入ると、机の上に置かれたカバンをあさっていた裕也が、すぐにこちらに気づき顔を上げた。
どうやら、裕也もまだ登校してきたばかりのようだ。
……そういえば、俺は重要なことを忘れてた。
コイツ……美恋の恋する相手に自ら志願したけど、一体何考えてんだ?
昨日の口振りからして、冗談とか、からかってるとか、そんなんではないみたいだし……。
美恋の恋する相手になるってことは、美恋が裕也を好きになる可能性があるってことで。
コイツだって、それくらいわかってるはずなのに。
もしも、美恋が裕也を好きになったら、裕也はどうするつもりなんだ?
前々から裕也が、美恋を気に入ってるのは知ってる。
俺が初めて美恋を幼なじみだと紹介した時も。
『美恋ちゃんてすごく良い子だね』
って感心したように言ってたし。