アスカラール
成孔を待っていた時間は長かったような気もするし、短かったような気もする。

「お待たせ…って、ソファーのうえに座っていればよかったのに」

成孔は困ったように笑いながら、美都にマグカップを渡した。

「紅茶でよかった?」

そう聞いてきた成孔に、
「はい…」

美都は首を縦に振ってうなずくと、彼の手からマグカップを受け取った。

マグカップに鼻を近づけると、ローズヒップの香りがした。

成孔は美都の隣に腰を下ろすと、先ほど置いた紙袋に手を伸ばすと中に入っていた小箱を取り出した。

その小箱の中にオランジェットが入っているのだ。

小箱を開けると、個装されたオランジェットを取り出した。

「こうして見ると買ってきたヤツみたいだね」

成孔はクスッと笑うと、袋を開けてオランジェットを出すと1口だけかじった。
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