アスカラール
「ああ、そう言うことね」

成孔は納得したと言うように返事をすると、
「俺、それには出ないって言ったはずなんだけどなあ…」
と、呟きながら人差し指で頬をかいた。

「先方が大事な会議だからどうしても出席しろと」

そう言った彼女に、
「マジか、それは困ったな…」

成孔はやれやれと言うように息を吐いた。

「どうしても出ないとダメ?」

確認するように聞いた成孔に、
「出てください」

彼女はすぐに答えた。

(すごい、秒だ…)

自分の頭のうえで繰り広げられているやりとりに、美都は心の中でツッコミを入れることしかできなかった。

「わかった、出るよ。

出席するって、そう先方に伝えておいて」

そう言った成孔に、
「かしこまりました」

彼女はペコリと頭を下げると、クルリと回れ右をして立ち去ったのだった。
< 107 / 218 >

この作品をシェア

pagetop