アスカラール
彼女のような人を“大人の女”と言うのだろうなと、美都は思った。

(私とは大違いだ)

そう思ったら、美都の胸がチクリ…と痛み出した。

「美都、どうかした?」

成孔が聞いてきた。

「あ…えっと、そろそろ帰ってもいいですか?

あんまり遅いと、父と兄が心配するので…」

美都は言った。

これ以上、成孔の隣にいたら胸の痛みに気づかれてしまうんじゃないかと思った。

とっさに口に出したことだったが、
「ああ、そうだね。

明日も仕事がある訳だし、何より森坂さんに嫌われたくないし」

成孔は仕方がないと言った様子で腰をあげた。

「途中まで送ってくよ」

そう言った成孔に、
「いえ、1人で帰れますので大丈夫です」

美都は首を横に振った。
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