アスカラール
7時に仕事を終えると、美都は家に帰った。

「ただいまー」

家に帰ると迎えてくれたのは、
「お帰り、美都!」

13歳年上の兄だった。

兄の森坂元治(モリサカゲンジ)は40歳で、『二月銀行』の本社で銀行員として働いている。

独身だ。

精悍な顔立ちで身長は180センチ、スタイルもモデルのようにいい。

当然のことながらつきあった女性は何人かいるのだが、結婚までに踏み切ることができていないのが不思議だ。

(本当に、どうしてなんだろう?)

結婚をしようとしない兄に美都が首を傾げたら、
「どうした?

首が痛いのか?」

元治が心配そうに声をかけてきた。

「ううん、何でもないよ」

美都が首を横に振って答えたら、
「そうか、首が痛かったら言ってな」

元治は言った。
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