アスカラール
父と兄が躰に穴を開けることを嫌がるため、ピアスをつけることを許されていないのだ。

「んっ?」

沙保は何かに気づいた様子だった。

「そう言えば、私と一緒に名前をあげた“成孔さん”って誰なの?」

沙保が聞いた。

その瞬間、美都の心臓がドキッ…と鳴った。

(沙保ちゃんの口から言っただけなのに…)

彼の名前を耳にしただけでもドキッと鳴った心臓に、美都はどうすることもできなかった。

「お兄ちゃんの大学時代の後輩の人」

「それって、七夕祭りで一緒に行くことになったって言う例の人?」

思い出したと言うように言った沙保に、
「そう、その人」

美都は首を縦に振ってうなずいた。

「このビルの中にあるIT関連会社のCEOをしているんだって」

「あら、玉村さんが勤めてる会社の人なんだ」

沙保は納得したと言うように言った。
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