アスカラール
「わかってる、上司にもその日は早く帰れるようにとお願いしたから」

そう言った美都に、
「なら、いいんだ」

父は返事をして微笑んだのだった。

「その日は母さんの命日だからな」

元治が夕飯の準備をしながら話しかけてきたので、
「うん、みんなでお母さんのお墓参りに出かけた後にご飯を食べるんだよね」

美都は言ったのだった。

「そうそう」

元治は首を縦に振ってうなずいたのだった。

美都の母親は、美都が小学2年生の夏に病気でこの世を去ったのだ。

「じゃあ、お風呂に入ってくるから」

「あいよー」

父と兄に見送られ、美都は今度こそリビングから立ち去った。

美都がリビングからいなくなると、
「美都は今日も元気だな」

父が夕飯の準備をしている元治に話しかけてきた。
< 13 / 218 >

この作品をシェア

pagetop