アスカラール
「ああ、そうだな」

元治は鍋にお湯を入れると、ガスをつけた。

今日の夕飯は冷やし中華である。

冷蔵庫からハムときゅうりとにんじんを取り出すと、それらを包丁で刻んだ。

「後は結婚してくれることだけだな」

そう言った父に、
「おいおい、そんなことを言わないでくれよ。

まだ美都に結婚は早いだろ」

元治は言い返した。

「もう27…いや、正確に言うならば後少しで28だぞ。

こっちとしては孫の顔…まあ、100歩譲って美都の花嫁姿が見たいんだ」

「…まあ、気持ちはわからなくもないけれど」

呟くように言った元治に、
「お前が40にもなって1人でいるのは、美都よりも先に結婚するのは忍びないからなんだろ?」
と、父が言った。

グサリと確信をつく言い方をしてきた父に、
「…それ、美都には言わないでくれよ」

元治は言い返したのだった。
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