アスカラール
美都は微笑むと、
「私もありがとうございました。

素敵な誕生日になりました」
と、成孔にお礼を言った。

きたばかりのエレベーターに一緒に乗ると、成孔は1階のボタンを押した。

(このままで終わる、訳ないよね?)

頭のうえに表示されている階数を見ながら、美都は心の中で呟いた。

成孔の好みでドレスアップをして、高級ホテルで食事をしたこの時間は、まるで夢のようだった。

好きな人と一緒に誕生日を過ごしたことはもちろんのこと、好きな人と誕生日が一緒だったことも嬉しかった。

(酔いに任せて…と言えば、成孔さんは許してくれるかな?)

美都は成孔の腕に向かって、自分の手を伸ばした。

「美都?」

成孔が自分の名前を呼んだ瞬間、美都は彼を自分の方に向かせた。
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