アスカラール
「さっき…」

「――好きなんです!」

成孔の言葉をさえぎるように、美都は言った。

「成孔さんのことが好きなんです…。

好きだから、あなたにキスをしたくなったと言うか…」

酔いに任せると言うのは難しいことなんだと、美都は理解した。

「ああ、そうなんだ」

成孔が返事をしたかと思ったら、美都は彼の腕の中にいた。

甘いお菓子のようなあの香りが美都の躰を包み込んだ。

「えっ、あの…?」

「嬉しい」

戸惑っている美都に、成孔が言った。

「美都が俺を好きになってくれて、とても嬉しい。

もしかしたら、俺は世界で1番の幸せ者かも知れない」

「…それは言い過ぎかと」

そう呟いた美都の顔を成孔は覗き込むと、
「本当にそう思ってる」
と、顔を近づけてきた。

「――ッ…」

一瞬だけ唇が触れて、すぐに離れた。
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