アスカラール
「ああ、これ?」

成孔は自分の左手に視線を向けた。

「ヒンドゥー教のガルーダって言う鳥の姿をしている神様なんだ。

俺自身は無宗教なんだけど、昔から宗教と言うものには興味があって。

5年前に母親を亡くしたのを機に入れてみたんだ」

成孔は得意気に笑いながら言った。

「痛かったですか?」

「いや、思った以上に痛みはそんなになかったよ」

美都は成孔の左手に手を伸ばすと、刺青に触れた。

「皮膚を削っているんですよね?」

そう聞いた美都に、
「削っていると言うよりも、傷をつけていると言った方が正しいかな。

その傷に墨汁とかの色素を入れて着色するんだ。

日本では刺青なんて聞くと物騒なイメージをされるけど、外国では主におしゃれで入れているんだ」

成孔は答えた。
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