アスカラール
「本当は和柄の刺青を入れたかったんだけど、雑賀ちゃんから“ヤクザに間違われたらシャレにならないのでやめてください”って全力で止められた」

その当時のことを思い出したのか、成孔は笑いながら言った。

「その当時から成孔さんの秘書は雑賀さんだったんですね」

自分の思ったことを美都は口に出した。

「美都、ヤキモチ焼かないで。

雑賀ちゃんはあくまでも俺の秘書で仕事仲間だから。

と言うか、彼女のことを“女”として見たことなんて1度もないから」

成孔は美都に言い聞かせるように言うと、頭をなでた。

何でそんなことを言ってきたのか、美都は全くと言っていいほどに理解ができなかった。

「雑賀さんも独身なんですか?」

「不思議なことに、雑賀ちゃんも独身なんだ」

美都の質問に成孔は答えた。
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