アスカラール
美都は指で刺青をなぞると、
「私だったらどんなのがいいんだろう?」
と、呟いた。

「えっ、入れたいの?」

成孔は驚いて聞いてきた。

「いや、入れませんけど。

と言うか、父と兄がそう言うのが嫌な人なんです。

ピアスだってさせてもらえないですし」

首を横に振って答えた美都に、
「その方が俺もいい。

美都の肌に刺青が入るなんて絶対に嫌だ」

成孔は美都の右手をとると、手の甲に唇を落とした。

「――ッ…!?」

ドキッ…と、美都の心臓が鳴った。

「美都はそのまんまでいいよ。

むしろ、何もしない方が君らしくていい」

「わ、私らしい…?」

戸惑いながら聞き返した美都に、
「うん、君らしい」

成孔は首を縦に振ってうなずいた。
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