アスカラール
唇に挑発を刻む
「美都さん、ちょっといいですか?

どうしてもわからないところがあるんですけど」

律が書類を片手に美都のデスクへやってきた。

「魚住くん、君には三橋さんと言う指導役の人がいるじゃないですか」

高崎が美都と律の間に割って入った。

「だって、三橋さんはトイレに行っていていないですもん」

口をとがらせて言い返した律に、
「トイレだったら帰るまで待てばいい話でしょう。

美都さんも君の相手をしているほどヒマじゃないんです。

おや、そう言っていたら三橋さんが戻ってきましたよ」

高崎はそこに視線を向けて、律に行くようにとうながした。

「はーい」

律はいじけたように返事をすると、仕方がないと言った様子で離れた。
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