アスカラール
これ以上ない嫌悪感に、美都は律から目をそらした。

「美都さん」

律の両手が頬に触れたかと思ったら、彼の方に向かされた。

彼に触れられたせいで、ゾクッ…と背筋が凍ったのがわかった。

「――や、やめて…!」

これ以上自分に触れて欲しくなくて、美都は頬をさわっている律の手を払った。

「どうして僕を見てくれないんですか?」

そう聞いてきた律に、
「――あなたは、嫌なの…」

美都は震える声で、その質問に答えた。

「成孔さん以外の男の人に近づいて欲しくないし、さわって欲しくない…」

美都がそう言ったら、
「彼氏の名前、“成孔さん”って言うんですね。

と言うか、本当に彼氏がいたんですね。

てっきり貝原さんのジョーダンかと思っていました」

律はやれやれと言った様子で息を吐いた。
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