アスカラール
「お兄ちゃん」

その声に視線を向けると、3歳下の妹の和香だった。

風呂から出てきたばかりの彼女はパジャマ姿で、バスタオルで短い髪を拭いていた。

「お風呂空いたよ」

和香はそう言うと、勝手知ったる様子でキッチンへと足を向かわせた。

「あいよー」

成孔は返事をすると、スマートフォンをテーブルのうえに置いた。

和香は冷蔵庫からスポーツ飲料を取り出すと、それをコップに注いだ。

「ねえ、お兄ちゃん」

「んー?」

「今日も例の彼女と連絡が取れないの?」

そう聞いてきた和香に、
「うん、今日もね」

成孔は答えると、シャツのボタンを外した。

「…何かやらかした?」

和香がジロリとした目つきを自分に向けてきた。
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