アスカラール
美都は兄のところに駆け寄ると、
「迎えにくるなら迎えにくるって電話すればよかったのに」
と、言った。

「ごめんごめん、美都が心配だったからさ」

元治は笑いながら答えると、車のドアを開けた。

後ろの座席には父が座っていた。

美都が助手席に座ったことを確認すると、元治は運転席に座った。

「それじゃあ、行こうか」

元治の運転で車が動き出した。

美都は窓に視線を向けると、移り変わる景色を見ていた。

この時間だと言うのに、空はまだ明るかった。

(夏だから当たり前か)

美都は心の中で呟いた。

途中で花屋に立ち寄ると、供える花を買った。

また車を走らせると、母が眠っている寺に到着した。
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