アスカラール
「片思いをしていたと言えばしていたけど、美都以外にもつきあった女は何人かいたよ」

成孔は言った。

「でも結婚までには至らなかったんでしょ?」

「…まあね」

痛いところを突かれた。

「20年経っていたらどんな姿になっているかわからないのに、よく片思いを続けられたよね?

つきあっている相手がいるかも知れないのに、ましてや結婚しているかも知れないのに」

やれやれと息を吐きながら言った和香に、
「美都がどんな姿になっていたとしても、俺の思いは変わらないよ。

相手がいたらあきらめようと思ってたけど」

成孔は言い返した。

「はいはい、大切にしていますね」

和香は空っぽになったコップを洗うと、水切りカゴの中に置いた。
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