アスカラール
「お先に失礼しまーす」

「はい、お疲れ様です」

6時に仕事を終えると、美都はオフィスを後にした。

その後で、
「お先に失礼します」

律もデスクから腰をあげると、美都の後を追うようにオフィスを出たのだった。

「やっぱり、何かありましたね」

そう声をかけてきた由真に、
「そうね」

沙保は返事をすることしかできなかった。

「待ってください!」

律がそう叫びながら自分を追ってくるのがわかった。

それに対して美都は足を止めることなく、ビルを後にした。

「美都さん!」

律が目の前に現れたので、美都は驚いて足を止めた。

「何の用ですか?」

そう聞いてきた美都に、
「謝りたいんです」

律が言った。

「もう美都さんのことはあきらめます。

だけども、後味が悪いままで仕事をしたくないんです」

続けて言った律を美都は無視すると、彼の横を通り過ぎた。
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