アスカラール
「もう仕事以外では美都さんに近づきませんし、声もかけません。

美都さんが望むなら会社も辞めます」

それでも追ってくる律に、
「会社は辞めなくていいから。

私のせいで辞めたなんて周りに思われたくないし、魚住くんも次の就職先を探したくないでしょ?」

美都は言い返した。

「美都さん、謝らせてください!」

律が通せんぼをするように美都の前に立った。

「謝っただけで美都さんの心の傷が癒えないことはわかっています。

僕のことを許してくれなくてもいいです。

だから…」

「――美都?」

律をさえぎるように名前を呼んだその声に、美都の躰がビクッと震えた。

声のした方向に視線を向けると、
「成孔さん…」

そこにいたのは成孔と黒髪ショートカットの女性だった。
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