アスカラール
みんなで墓石の掃除を済ませると、買ってきたばかりの花と線香を供えた。

「今年も無事に、家族全員でこの日を迎えることができてよかったです」

父がそう言って両手をあわせたので、美都と元治も一緒になって両手をあわせた。

(お母さんが亡くなって、もう20年か…)

美都は心の中で呟くと、そっと目を閉じた。

(またこうして来年も家族みんなでこれますように…)

心の中で唱えると、美都は目を開けてあわせていた両手を下ろした。

「来年は、美都か元治が相手を連れてきているといいな」

笑いながら言った父に、
「おいおい、そんなことを言うなよ」

元治は苦笑いをした。

(相手か…。

もうすぐで28歳だもんね…)

父と兄の様子を見ながら、美都は心の中で呟いた。

墓参りを終えて次に向かった先は、都内でも有名な高級中華料理店だった。
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