アスカラール
何が“なるほどね”なんだろうか?

「それで、俺のことを避けていたんだ」

そう言った成孔に、
「はい…」

美都は呟いているような声で返事をした。

「何かずいぶんと俺のことを誤解をしているようだけど…そんなことで美都のことを軽蔑しないし、嫌いにならないから」

美都は成孔の顔を見た。

眼鏡越しで自分を見つめている優しい目とぶつかった。

「俺が美都を嫌いになる訳ないでしょ?」

成孔は美都の頭をなでた。

その手の大きさと温かさに、美都は安心感を覚えた。

(私は、本当に成孔さんが好きなんだ)

自分の中にある彼への思いに改めて気づかされた。

「正直に話してくれてありがとう」

成孔の端正な顔が近づいてきたかと思ったら、
「――ッ…」

唇が重なった。
< 204 / 218 >

この作品をシェア

pagetop