アスカラール
「今すぐに美都が欲しいんだ」

眼鏡越しのその瞳に美都の心臓は加速する。

成孔が自分を求めているように、自分も成孔を求めているのがわかった。

震える唇を開いて、美都は口を動かした。

「――私も、あなたが欲しいです…」

精いっぱいの勇気をこめて、音を発して告げた。

言い終わった瞬間、美都は両手で顔を隠したい衝動に駆られた。

(は、恥ずかし過ぎる…!)

美都は眼鏡越しの目から逃げるようにうつむいた。

我ながら何を言っているのだろうと思った。

だけども、成孔を心の底から欲しいと思ったのは事実である。

「――美都…」

成孔が名前を呼んだ。

頬に添えられていた手によって、うつむいていた顔があげられた。

端正なその顔立ちが近づいてきたその瞬間、美都は目を閉じた。

「――ッ…」

重なったその唇に、美都は酔わされた。
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