アスカラール
42階から51階はホテルになっていることを知っていたが、利用したのは今日が初めてだった。

(初めて利用した日が初めてつきあうことになった人と一緒だなんて…)

そんなことを思いながら部屋に足を踏み入れたら、後ろから成孔に抱きしめられた。

「――な、成孔さん…?」

美都が振り返って名前を呼んだら、それを待っていたと言うように成孔が唇を重ねてきた。

「――ッ、んっ…」

今日で唇を重ねるのは、もう何度目だろうか?

離れていたその時間を埋めるように、成孔はキスを繰り返した。

気がついたら、美都はベッドのうえに押し倒されていた。

自分を見下ろしている成孔の顔が普段とは違って見えたのは、自分の気のせいだろうか?

あまりにも自分を見つめてくるものだから、美都は目をそらしたくなった。
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