アスカラール
「美都さん、おめでとうございます」

そう言ったのはスーツ姿の律だった。

「お兄ちゃん、おめでとう」

ベージュ色のパンツドレスに身を包んだ和香が成孔に声をかけた。

「ありがとな、和香」

妹に向かって成孔は笑いながらお礼を言った。

「お前もな、早くそいつと結婚しろよ」

成孔はそう言って彼女の隣にいる律に視線を向けた。

律からの熱烈なアプローチを受けて、それに根負けをする形でつきあうことになったのだそうだ。

「はいはい、そのうちね」

そう言い返した和香に、
「そのうちっていつですか?」

律が食い気味にかかってきた。

「そ、“そのうち”は“そのうち”よ。

と言うか、今は仕事に手がいっぱいでそれどころじゃないんだから!」

何だかんだと文句を言いつつも和香は幸せな様子だ。
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