アスカラール
「俺もしばらくは無理だろうな。

職場の人間も独身よりも既婚の方が多くなってきているし」

元治は苦笑いをしながら妹の質問に答えた。

「へえ、そうなんだ」

美都は返事をした。

そう言えば、彼女には“反抗期”と言うものが存在しなかったと言うことを元治は思い出した。

中学も高校も大学も、今と特に対して変わらない穏やかな時間を美都は過ごしていた。

(我ながら、甘やかし過ぎたな…)

元治は心の中で呟いた。

年齢の離れた妹だから、母親がいないからと言う理由で、彼女を過保護に育ててしまったことを元治は少しだけ後悔していた。

「お兄ちゃんも一緒に見る?」

メニュー表を見せてきた美都に微笑ましさを感じながら、
「見ようか」

元治は彼女と一緒にメニュー表を覗き込んだ。

やっぱり、年齢の離れたかわいい妹にはかなわない。
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